インタビューNo.24現役競輪選手:加瀬 加奈子さん | Tキャリあなたのセカンドキャリアを応援します!

「これが競輪選手・加瀬加奈子の男道!」
~現役選手×教員のデュアルキャリアに挑戦、ついに幼き日の夢を叶えた2024年~

バンクを疾走するプロの競輪選手として名を馳せる加瀬 加奈子さん(102期)。 加瀬さんが新たに踏み出すデュアルキャリア、その道は教員という幼き日の夢に繋がります。
挫折を乗り越え、まっすぐに夢を追い続ける加瀬さんの新たな挑戦。 その人生哲学は、まさに競輪における作戦と戦法そのものと言えるかもしれません。

現役選手として第一線で活躍しながら、次世代の育成に携わる加瀬さんが描く未来とは―。

◆加瀬 加奈子さん(102期・新潟所属)のプロフィール◆
2011年 競輪学校(現在の日本競輪選手養成所)の第102回(女子第1期)試験に合格
     自転車競技大会でも好成績を収めつつ、
2012年 第102回卒業記念レースで完全優勝し、女子初代同レース優勝者として名を刻む
2018年 ご結婚
2019年 第一子を授かり、1年ぶりにレースへ復帰
2024年 現在も競輪選手として第一線で活躍中でありながら、
     通信制高校で保健体育の教員としての夢をかなえる

通算成績(2024年11月30日現在)901勝、優勝57回、ガールズグランプリ出場3回、GⅠ出場3回

―――デュアルキャリア(教員)に挑戦すると伺いました。きっかけは?


教員免許は学生の頃、順天堂大学で取りました。 師匠(池端 将巳さん)との雑談の中で、「競輪選手を謳歌するのはいい、でもいつか必ず引退する時が来るんだから、 次にすることも考えておけば?」みたいなことを言われた時に「自分が持っている資格といえば保健体育の教員免許くらいです。」って返したら、 「もし保健体育の教員やりたいと思うんだったら、まずは非常勤とかでやってみたらいいんじゃない?」って言われまして。
「急に教員って言っても、最近の生徒の傾向やどういう教育の仕方なのかも分からないだろうし、 出身高に相談して非常勤なんかをバイトがてら始めてみたらどう?」みたいなことを言われたのをきっかけに調べ始めて、 たまたまその時に募集していたのが今回採用して頂いた通信制の高校なんですけど、そこで副業をしてみようかなって決断しました。

ハローワークで見つけた学校なんですが、弥彦競輪の公式YouTubeチャンネル「YELL(エール)」に出演しているマルチタレントの宮村侑希さんが、 MCやりながらその通信制高校で美術の先生をやっていまして、「加瀬さんなら絶対に人気出ますよ!生徒たちも楽しいって思ってくれますよ!」って言ってくれて、 じゃあやってみようかなって。それが今年の春くらい。

―――本当に教員としての道が始まるんですね。※2024年10月某日取材


「教育の多様化」ということもあり、子どもの人数が減少していますが、通信制高校を選択する生徒は、年々増加しています。
通信制高校でも特に本校は、自分のやりたいことが明確な生徒が多く、そこから全日ではなく、通信制を選択した生徒が多く通学しており、担当している保健体育も文科省で定められたカリキュラムに従って面接授業を実施しています。
平日は練習があるし、あっせん調整もできる。土日での授業なんかも競輪との両立という面では逆に好都合でWin Winかなっと思っています。

―――競輪選手より先に教員への夢があったんですね。


学生時代はバスケ部に所属していて体育教師もいいかなって考えていたんですけど、 目にボールが当たって網膜剥離になり、失明する危険があったので引退するしかなかった。 それで悩んだ末にトライアスロン部に入りました。競輪への道が開いた最初のきっかけですね。

目の怪我をきっかけに、障がい者スポーツの勉強をして障がい者の方々に運動を教えたいなって思うようになり、大学卒業後は、知的障がい者施設に4年半勤めました。 その時に、地元の新潟で国体のトライアスロンの第1回大会が開催されるのを知りまして、 出場するために約10年ぶりに地元へ戻ったんです。
偶然、長岡市役所の介護保険課で高齢者に運動を教える運動指導員を募集しているのを知り、運よく運動指導員になれたので、そこで働きながら国体にも出場しました。 スイムとランは大したことなかったんですけど、バイク(自転車)のバイクラップ(記録)は、全国1位でした。
それで、自転車は結構通用するんだなぁと思っていたところ、たまたま夕方のニュースで女子競輪第1回生募集の話しを目にしまして、母からも自転車速いんだから、やってみたら?って。 さっそく弥彦競輪のCLUB SPIRITS(クラブスピリッツ)に申し込んで、今思えば、ラッキーな展開でしたね。
高校の時から教員になりたかったので、もちろん競輪選手になりたいとは思っていませんでしたが、その後とんとん拍子で競輪選手への道が決まった感じです。

目の怪我をきっかけにどんどん競輪選手の道が広がっていき、 おかげで競輪選手として華やかなプロ生活を謳歌はできているんですけど、 その代わりに教員の夢は、志半ばで辞めることになりました。

―――最初の夢だった教員への道は、遠ざかっていったんですね。


でも心のどこかで「今の時代の教育、なんとかならないのかな」って思っていて。 ニュースで教員の不祥事などを目にすると、どうしても教員みたいな気持ちになって入れ込んで見てしまうところはあるんですよ。やっぱり頭の片隅で気になっていた職業なので。
でも、競輪選手を辞める気はないので、非常勤で副業として挑戦する決断をしました。

―――競輪選手としての経験を、教員の仕事でどのように役立てたいですか?


怪我を乗り越えて、競輪選手をやっていることでしょうか。 バスケを諦めた時もそう、競輪で負けた時もそう、腐ったとて現実は変わらないじゃないですか。現実を受け止めてまた頑張らないといけない。
そういう挫折を生徒たちもこれから経験していくと思うのですが、 なるべく早く気持ちを切り替えて、前向きに進んでほしいという想いは伝えていきたいと思います。身をもって経験してきたので、その点は他の先生より説得力があると思うんです。
あとは、失敗を恐れずチャレンジすることや汗をかくことの楽しさを伝えていけたらいいですね。

―――色んな挑戦の結果が、今に繋がっているんですね。


全日制から転学してきた生徒も含めて、「転学して良かった」「今の学校で高校生活が最高に楽しく充実していた」などの声も多く、 難関私立大学・国公立大学の合格者も出ていますので、本校から日本を変えるようなすごい人材がでるかもしれない。 そんな生徒たちの後押しをしてきたいですね。
私自身、教員の仕事も壁にぶつかることがあるとは思いますが、それを乗り越えることが自分を一回り大きくするチャンスだと思って、頑張りたいと考えています。
ただ、本業は競輪選手っていうところをブレないようにしたいですね。

―――ご自身の経験を通し、「将来の夢」について子どもたちにどんなことを伝えたいですか?


恐れずにやりたいことをやれって感じです。 競輪でいう先行もそうですけど、逃げなきゃ結果はわからない。それで1着だったら最高じゃないですか!だから「逃げてから考えろよ」みたいな感じで一歩を踏み出してもらいたい。
私も教員として、もしかしたら大失敗するかもしれませんけど(笑)

―――デュアルキャリアを成功させるために、ご自身で重要だと考えていることは何ですか?


独身時代と違って、午前中練習して、午後に娘のお迎え、その後娘と遊んで夜は19、20時には寝かしつけて、 翌朝5、6時には娘が起きるといった感じなので、時間を有効に使うよう心掛けています。 レース参加中にも保健体育の勉強の時間を作ろうかなと考えています。

―――今後の目標や夢について。


生徒たちと信頼関係が築けたらいいなとは思っています。 スポコン熱血系で生きてきてるんで、それが教員として吉と出るか凶と出るか!?(笑)
選手としては、己の走り「先行」を貫くならあと何年やれるのかな?とは思いますけど、 娘が義務教育を終えるまで、あと10年は頑張りたいですね。

―――今後、挑戦してみたいことはありますか?


競輪界も若い人が少なくなってきた印象があるので、若手の育成には興味がありますね。
育成もですが、高校、大学で勧誘活動をしたいです。 今、ガールズサマーキャンプin弥彦というのを私が提案して去年から続けてもらっているんですけど、 参加者が去年の2人から今年は8~10人くらい来たのかな。定着してくるといいんですけどね。

―――夢に向かって挑戦している後輩へのメッセージをお願いします。


「何でもどんどんやってみなよ!」ですね。 夢に向かって努力したら何でも出来るのではないかと。 何でも興味を持ったことがあったら、年齢は関係ないぞ!って思います。 命懸けでやって、達成出来たら最高じゃん!みたいな感じです。

―――後輩選手に対してアドバイスなどせひ。


負けを恐れず仕掛けたらいいじゃんって思います。 負けても死ぬわけじゃない、またすぐにレースがあるし、練習すればいい。 同じ7着でもジャン(打鐘)から全開の7着だったら、 いつかは3着になるかもしれないし、1着になるかもしれない、そう思います!

◆◆初めての授業を終えた加瀬さんからご報告が届きました。◆◆


2024年の12月某日、約40名の生徒を前にして不安を抱えながら教壇に立ち、5時間という長丁場に挑んだ加瀬さん。
大学時代に鈴木大地さん(水泳オリンピックメダリスト)から受けた授業を思い出しつつ、 アスリートとして伝えられることをご自身の経験を交えながら、次世代を担う生徒の皆さんに熱く語ったとのこと。

ほとんどの生徒が、鈴木大地さんを知らないというジェネレーションギャップに戸惑いながらも、 授業を終えた生徒たちから受け取ったレポートには、それぞれの熱い想いが綴られており、安堵すると同時に確かな手ごたえを感じたようです。

取材を終えて―――


加瀬加奈子さんのインタビューを通じて、加瀬さんの「挑戦する勇気」と「決して諦めない心」が、 どれほど加瀬さん自身を駆り立てているのかを感じることができました。 競輪選手として第一線で活躍しながら、教員としての一歩を踏み出す加瀬さんの姿は、 プロアスリートにおけるロールモデル(※1)の一例として、多くの人に勇気と刺激を与えるに違いありません。
これからも「先行一本勝負」のマインドで、多くのアスリートや生徒に影響を与えながら、自己の可能性を探求し続けていくことでしょう。
加瀬さんの今後益々のご活躍を心から祈っています。

諦めない心は最強ギア! 競輪選手・加瀬加奈子は、教員への夢に向かって再び「駆ける」!

※1「将来こうありたい」と目標にする存在

掲載日:2024年12月16日