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競輪選手から接客のプロへ。
カインズで“信頼”を積み重ねる上田三千夫さんのセカンドキャリア

上田 三千夫さん

自転車販売店 競輪選手/56期

皆さんは、競輪選手の間で人気の就職先として知られているホームセンターをご存じでしょうか。
それは…誰もが一度はお世話になったことがある、そう「カインズ」さんです。
今回は、そのなかでも特に自転車の販売が多い「カインズ浦和美園店」へ伺いました。
お話を伺ったのは、元競輪選手の上田三千夫(うえだみちお)さん(56期)です。

――まずは、選手時代の思い出について

すべてが面白かったという思い出しかないですね。中学時代、野球推薦ももらっていましたが、高校で自転車に転向しました。同期は皆プロを目指していましたが、自分は考えておらず大学へ進学しました。
とある事情で中退することになってしまったのですが、そのとき所属していた企業チームのトップの方が「お前は短距離なんだから選手を受けてみろよ」って言ってくれて。
それで受ける気になったんです。だから給料がこんなにもらえるとは知らなくて、最初はびっくりしちゃったくらいです。

自分の好きな練習をやって、負けるのも自分の責任だし、勝てば勝ったで自分が全部もらえるわけなので…すごいなと思いました。
若い頃は、もう「楽しい」しかなかったですね。

自分は、一番競輪が盛り上がっていく時代を見てきました。何万人という観客の中で走ったんですけど、1周ずっと聞こえる声が「ヤジ」なんですよ…すごい楽しいですよ(笑)
自分、ヤジ大好きで、言ってもらえるってなんかわくわくしちゃって。嫌いでも何でもいいから、自分のことを見てくれているんだって思えるのが、すごいプラスだったんですよね。逆に。

勝てば勝ったで、また声を掛けてくれるんで。すごい楽しかったですし、お客様も選手も熱かった時代でしたね。

――引退当時のセカンドキャリア事情について

当時は、(競走場の)警備員か、自分で起業するか、というくらいしか考えつかなかったと思うんですよね。正直、引退する年になっても、具体的にはまだ何も考えていませんでした。とはいえ、いろいろと資格を受けたりはしていたんですよ、実は。
競輪学校の先生になるのかなぁとか考えたりもしていたんですけど、あいまいでしかなかったんです。まぁ、選手になったのもあいまいだったんですけどね(笑)
なので、そこらへんはどうにかなるだろうくらいにしか思っていなかったんですけど…今の時代だったら、それはちょっと「甘い」考えなのかもしれませんね。
現役で頑張っている選手の中には、セカンドキャリアの話をするとネガティブに捉える方もいると思うんですね。競技に集中したいという気持ちもわかります。でも、自分が考えている以上に社会は厳しいと思うので、少しだけでも意識しておかないと、絶対に後悔すると思います。
まずは、興味を持つこと。まわりにいろいろ聞くべきだし、気にするべきですね。
とはいえ、どう捉えるかは自身の問題なんでしょうけど…

――引退後の生活設計について意識しだしたのはいつ頃?

自分たちの時代に選手年金制度が廃止になるって話がありまして、それだったら今引退したほうがいいんじゃないのかって…それでいろいろ動いたのは確かですね。震災での不安もありましたので。

――どんな(就職)活動をいつから始めましたか?

引退後の生活設計ですけど、当時は真面目に考えていなくて…震災での不安もありましたし、そこから動いたのは確かですね。
ちょうど引退する年に、競輪学校(現:日本競輪選手養成所)の教官採用試験があって、受かったら引退しようくらいに思っていたんですね。結局、そんな甘いもんじゃなかったんですけど。
思うようなレースができなくなって、練習にも身が入らなくなって…そんなときに、競輪場の前(道場の入り口)にカインズの募集が貼ってあったんですよ。それが、自転車安全整備士の資格保有者の募集で。
2年くらい前にその資格を取っていましたし、かなりいい条件だったので、「じゃあ、話だけでも聞いてみようかなぁ」って電話して…それでとんとん拍子です。

――タイミングよくカインズの募集を見られて?

当時の募集は、たまたまだったみたいで。自転車屋さんの開業を勧めてくれる方々もいたんですけど、いろいろ考えて、ここが一番自分に合ってるかなって。

――起業されている元選手の方もたくさんいらっしゃいますよね。

ひとりで商売をやっている方は、尊敬しますよね。ものすごいと思います。
現役選手や元選手同士、SNSでつながっているんですけど、自然災害(大雨など)で困っていた方がいたときなんかは、皆で助け合っていたりもしています。ネットのつながりってすごいなーって思いますね。
そういうことも乗り越えて、利益を出していかなきゃならないじゃないですか。大きな楽しさがある反面、大変ですよね…うん。

――普段からお客様に対して心掛けていることは?

すべてのお客様に対して、平等に接すること。あとは、お客様のニーズを汲み取って、最適なご提案ができるように心掛けています。

――お仕事でのご苦労、やりがいなど。

やりがいは、お客様が指名で来てくれるようになることですね。「上田さんいます?」って。
中には、ご指名で通ってくださって、これまでに5台くらい買ってくれた方もいます。
長年通ってくださるご家族なんですが、当初高校生だったお子さんが成長して、あるとき「子どもが生まれました」と連れてきてくれたんですよ。もう自分の孫みたいに思えて、「よかったねー」って。そしたらこの前、2人目も連れてきてくれたんですけど(笑)
高校生のときに1台目の自転車をご購入いただいて、次は子どもを乗せる電動自転車をご購入いただいて…それって、信頼していただけているってことじゃないですか。ありがたいですよね。
商品の魅力をお伝えしてご購入いただいて、次にまたいい情報をお伝えして…そうやって信頼を得て、また買ってもらえる。世代を超えてつながっていく感じでしょうか。
メリットだけでなくデメリットもしっかりお伝えすると、皆さんびっくりされるんですよ。でも、結構喜んでいただける。そういったリアクションのお客様は、かなりの確率でまた来てくれます。
また、「元選手なんですよ」とお伝えするだけでも会話(コミュニケーション)が広がりますよね。中には、現役時代のことをすごく覚えていてくれる方もいて…うれしいですよ。
あと、職場って「仲間」ですよね。もともとは全然知らない人同士じゃないですか。自分は選手だったからといって傲りは捨てて、自分から相手の懐へ飛び込んでいく。資格はあくまでも資格(試験の結果)であって、実践は全然違いますので。
電動自転車や一般的なシティサイクルも、やっぱり経験がないと扱いが難しいんです。そういう経験を持っている現場の先輩たちに全部教えてもらわないといけないので、いかに仲間の懐に入っていくかが大事じゃないかと思います。
自転車だけじゃなくて、パソコンの扱いなんかも教えていただいたり…自分はそういうところ(仲間・先輩)ですごく恵まれていたと思っています。
(後輩選手に向けて)自分の置かれた立場を考えて動く、というんでしょうか。競輪でいう4番手回りから始まる…じゃないですけど、そこからですよね。
引退して転職した(新しい環境に行った)際には、そういった考え方をしたほうがいいと思います。持ちつ持たれつ、そう思います。

――選手時代やそれまでのご経験で役に立ったことは?

選手は個人事業主でありながらラインで戦っているので、どんなラインでも大切にしなければいけないし、時には裏切られることもある。その経験から、今も深く考えすぎず、その時その時に応じて動けるようになっているんじゃないかと思います。
どの仕事でも、いいこともあれば悪いこともある…そういうものだと思うようにしていますね。
どんな仕事でもそうだと思うんですよ。個人事業主でも、ラーメン屋でも、なんだかんだいっても結局まわりで手助けしてくれる人はいると思う。持ちつ持たれつですね、はい。

――今のお仕事、どんな人に向いていると思いますか?

やっぱり真面目じゃなきゃだめですね。はい。真面目っていうのは、同じことをコツコツできる人。選手でいうと練習好き。
あと、やっぱりコミュニケーションですね。しゃべらないとだめですよ。不愛想は損しますから、絶対に。

――これから選手を目指す若者たちへひとこと

そうですね、競輪選手はいい商売だと思いますよ。競輪選手だけじゃなく、他競技を含めスポーツ全般に言えることですが、すごく魅力のある職業ですよね。
自分の責任(努力)で稼ぎが決まる…これは気持ちがいいことだと思います。今思えば、もっと練習しておけばよかったなぁと思うんですけど(笑)
自分は何も考えずに、ただ流れで選手になっちゃったみたいなところがあるんですけど…それでも30年近く続けられたんですから。だから、好きで、楽しくなってくれば、続けられる職業だと思うんです。
なので、まずは好きにならなきゃだめ。好きになるというか、興味を持つというか、そこからですね。
そうすると生活がすごく楽しくなる。起きる時間も自分で決められる…そうです、夜更かししてもいいんですから(笑)
それでもトレーニングして、結果が出せれば正義。そんな職業って、他にあまりないですから。

――後悔のないセカンドキャリアをおくれるよう、後輩選手の方々にアドバイスを

いろんなことに興味を持ったほうがいいですよね、絶対。できそうなことがあるんだったら、何にでも挑戦してみるといい。それがだめなら次!って感じで、引き出しは多いほうがいいと思うので。
昔、東大自転車部OBの方に「一番好きなことを仕事にしないほうがいい」って言われたことがあって…そのときは、「自転車に乗るのは好きですけど、整備はそんなに好きじゃないから大丈夫です」って返したんです(笑)
実際、今の仕事も10年続いていますし…当たってたのかもしれませんね(笑)
ただ、つらいときはそんなに固執する必要もないと思うんです。「石の上にも三年」って言いますけど、そんなに我慢し続ける必要はないよって。限界を感じたら、すぐ切り替えたほうがいい場合もある。今の時代、結構いろんな選択肢があるじゃないですか。
あと、資格はたくさん持っていたほうが絶対いいですよ。それはもう、取れるだけ取っておいたほうがいいです(笑)
英語が話せるとか、そんな感じでもいいので。
社会の厳しさって、引退してから理解すると思うんですけど、でもそれじゃあちょっと遅いかもしれない。だから、その前から少しずつ、手探りでいいから備えてほしいですね。

インタビューを終えて

「仲間」をキーワードに、人とのつながりや絆をとても大切にされている上田さん。
ご本人の醸し出すあふれるやさしさと他者への敬意、そこから得る信頼が紡ぐ絆…そのお人柄に惹かれ、今も多くの現役選手や選手OBの方々が上田さんに相談を持ちかけ、時には直接会いに店舗へ訪れるとのこと。
セカンドキャリアを考えるアスリートの皆さんにとっても、何かしらのきっかけや気づきを感じていただけたなら幸いです。

上田三千夫さん プロフィール

1985年9月6日デビュー(56期)
★選手生活28年 通算成績287勝
2013年11月8日に惜しまれつつ引退
現在は「カインズ浦和美園店」で活躍!

掲載日:2023年7月18日
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