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❝後輩たちに安心材料を❞競輪選手からゴルフ場の裏方へ——
元競輪選手・伊藤貴史さん(97期)が語るセカンドキャリア

伊藤 貴史さん

ゴルフ場整備 競輪選手/97期

競輪選手として数々の試練を乗り越えた伊藤貴史さん (97期)
引退後、現在はゴルフ場で新たな挑戦を始めています。
競技からセカンドキャリアへ、そして後輩たちへの想いを込めて、伊藤さんの新たな一歩をご紹介します。

――選手時代の思い出は?

やっぱり全国を巡れるっていうのはすごい経験ですよね。今を生きてるなと思いました。
競輪選手になるのが夢で、アマチュアから苦労して時間もかかってやっと選手になれたので、どんなに辛くても毎日がすごい楽しかったです。
デビュー戦の高知では、緊張とワクワクが入り混じっていました。でも、その後の3ヶ月間は1着が取れず、焦る気持ちも強かったんです。初めて1着を取った瞬間、やっとスタートラインに立った感じがしました。
その中でも、久留米の最終日が特に印象に残っています。1着を逃げ切ったレースでは、お客様からスタンディングオベーションをもらい、「競輪選手として認められた」と感じました。優勝よりもある意味ちょっと嬉しかったかもしれないです。

――引退を決意したきっかけは?

正直、競技を続けられないなんて思ってもいませんでした。でも、指定練習で後ろから突っ込まれて骨折してしまい、それで自転車が進まなくなり、成績が下降していき、強制引退になりました。自分の人生計画では50歳までやりたかったけど、10年以上早くにセカンドキャリアを迎えることになったんです。最初は正直、どうしようかと戸惑いました。

――引退後の生活設計について意識しだしたのはいつ頃?

引退が決まってすぐに就職活動を始めました。年齢や経験の不安もあったので、できるだけ早く動こうと思ったんです。ハローワークに飛び込んで、転職活動を始めましたが、履歴書を書くことが本当に大変でしたね。正直、競輪選手としての経験を一般的な仕事にどう繋げるか全くわからなかったので、最初は手が止まりました。自己PRを書かなきゃいけないけど、競輪選手としてどんなことを書いていいのか分からなかった。それでも、続けるしかなかったですから、なんとか自分なりに書いて送り続けました。
最初は、クリーンセンターのゴミ焼却施設で運転員として働いてました。お給料はそこそこ良かったんですけど、夜勤がきつくて…。家族との時間も取れなかったし、生活が自分に合わないと感じるようになったんです。それで、転職を考えて、もう一度ハローワークに行って、今のゴルフ場の仕事に出会いました。

――今のゴルフ場のお仕事を選んだ理由は?

ゴルフ場の仕事を選んだ理由は、やっぱりスポーツに携わりたかったからです。競輪選手時代は表舞台で走らせてもらっていたから、今度は裏方の仕事も知っておくべきじゃないかと思って。あと早朝勤務。ここは6時始業なんで、朝、僕4時半起きです、今。選手時代は朝練とかしてたんで、全然 苦じゃないんですよ。また、朝が早い分、仕事が早く終わるので、家族との時間が増えるのも大きな理由でした。

――この仕事のやりがいは?

自然相手の仕事なんで温度や環境によって全く状況が異なるんですよね。ゴルフ場でも、予期せぬ出来事が起きることがあって、「えっ?!」て驚かされることもあります。自分が入社してからも、天候に左右されることが多くて、自然相手は本当に大変だなと実感しています。上司が「答えが見つからない職業だ」と言っていました。そこが自分にとっては面白い点だなと思っています。競輪選手も答えが簡単には見つからないじゃないですか。だから、そういった意味では似ているなと思います。逆に、答えが出ないという点で苦労もあるかもしれませんが、それが職人仕事だとも言えると思います。ゴールがなく、常に自分をアップデートしていく感じですね。実は、甲子園球場の芝とかには以前はあまり興味がなかったんですが、今ではサッ カー場とかを見るのが楽しくなっています。スポーツに関係しているからこそ、今思えばその部分も面白いなと思います。

――職場の方々にも恵まれてるそうですね

そうなんです。自然相手なんで、本当に不確定要素が多いじゃないですか。チームで動いていて、できないことは誰かが補う。競輪にちょっと近いかもしれないですね。みんな親切丁寧に教えてくれます。50代~60代が多い職場で40代の僕はまだまだ若いと可愛がってくれます(笑)

――競輪選手時代の経験が役に立っていることは?

競輪選手時代に身につけた体力や精神力が、今でも役立っています。早起きも体力を使う仕事も、競輪選手時代の習慣があるから、全然苦になりません。あの頃の経験があったからこそ、今の仕事でも頑張れています。

――あとに続く現役選手、後輩の方々にセカンドキャリアのアドバイスをお願いします。

やりがいと給与面って、やっぱり両立できないことが多いです。給料を取る代わりにかなり苦労しなきゃいけないこともあるし、逆に苦労が少ない仕事でも給料は安いことが多い。けど、家族サービスができるというメリットもあるんですよね。そういう状況や自分の置かれている環境によって判断 ・決めることが大切だと思います。そのうえで、まず『お金を貯めて時間を稼ぐ』ことを伝えたいです。選手時代は一生懸命やって、貯蓄をして、その余裕を持った上でゆっくり次を考えられる環境が大切だと思います。その余裕がないと、どうしても焦ってしまって、後悔することがあるかもしれません。焦らずに、計画的に準備をしておくことが、結局は自分の幸せに繋がると思います。
僕も『自分が頑張れば、後輩たちがその道を歩んでくれるかもしれない』と思って頑張っています。自分が道を作ることで、後輩たちもその道を歩みやすくなると思います。それが、後輩たちにとって安心材料になると思うので、自分の経験を少しでも活かしてあげたいです。

インタビューを終えて

特に印象的だったのは、セカンドキャリアにおける準備の重要性を語るお言葉でした。
不安定な収入への危機感から早い段階で貯蓄を始め、引退後すぐに就職活動を開始した行動力は、現役選手へヒントとなるお話でした。クリーンセンターでの苦労を経て、スポーツに関わりたいとの希望からゴルフ場の仕事を選んだ背景には、競技への愛情と、裏方を知りたいという探求心が伺えました。
掲載されている写真からも伝わるように、現在の職場では先輩方の温かい雰囲気に支えられており、その環境が伊藤さんの仕事への熱意と向上心をさらに引き出しているようでした。Tキャリ事務局一同、伊藤さんの今後の活躍を心より願っています。

伊藤貴史さん プロフィール

2010年1月13日デビュー97期
★現役生活13年 通算成績184勝
2023年1月23日に惜しまれつつ引退
現在は高知県にあるゴルフ場に勤務

掲載日:2025年7月7日
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