俵 裕一郎さん
1991年4月にデビューし、2023年7月まで実に32年4か月にわたり競輪選手として走り続けた 裕一郎さん(福岡県・67期)。
通算242勝、地元の小倉と門司での優勝やバンクレコード保持など、数々の輝かしい実績を残してきました。
引退後は「T+カイロプラクティックたわらのて」を開業し、地域に根差したカイロプラクターとして新たな一歩を踏み出しています。
今回は、現役時代の思い出から引退のきっかけ、そして第二のキャリアへの想いを伺いました。
僕は小中高とずっとバスケットをやっていたんです。高校はインターハイ優勝校に所属していて、かなり厳しい練習環境でした。その脚力の貯金があったんでしょうね。就職してスポーツ店に勤めたんですが、将来の給料を想像したときに「このままでいいのか」と思ったんです。ちょうど叔父が競輪選手だったこともあり、相談してみたら「まず自転車に乗ってみろ」と。そこから1年間、自転車漬けの生活が始まりました。
最初の受験では不合格でしたが、2度目で競輪学校に合格。競輪用の自転車にブレーキを装着して山を登り、バイクに60kmで引っ張られる練習を繰り返す厳しい日々。忘れられないアマチュア時代でした。
やはり地元の小倉と門司で優勝できたことですね。あの瞬間は今でも鮮明に覚えています。それと小倉競輪場のバンクレコードを出せたこと。神山雄一郎さんが持っていた記録を更新したんです。翌年、神山さんが来たときに「あれ!ゆういちろうが違うゆういちろうになってる!」とおっしゃっ ていたそうで、嬉しかったですね。
練習は正直、楽しいと思ったことは一度もなかったです。きつくて当然、それが仕事でしたから。でも、レース遠征の移動や宿舎での時間は宝物でしたね。新幹線の食堂車でワイワイしたり、高知競輪場 (選手宿舎)の名物「カレーラーメン」を食べたり。賞金も良かった時代で、レース後に仲間と 集まるのが何より楽しかったです。
一番大きかったのは怪我です。若い頃は治りが早くて「自分は怪我をしても大丈夫」と思っていたんですが、50代になって治りが遅くなった。2回続けて落車したとき、「もう無理をしてはいけない」と直感しました。怪我の回復スピードが落ちたこと、それが引退を決意した一番の理由です。
いえ、実は現役の終盤からカイロの学校に通っていました。自分自身が治療を受けて「これは面白い」と思ったのがきっかけです。柔整の学校も考えましたが、保険診療に縛られず、幅広く施術できるカイロの方が自分には合っていると感じました。奥さんがマラソンランナーということもあり、「自分の技術で支えたい」と思ったのも大きいですね。
学校では3年間学び、資格も取得。借金をしてでも学んだのは「選手生活で得た経験を次につなげたい」という想いからでした。
物件探しも人との縁でした。最初は安すぎて「和式トイレなのか?笑」と思ったくらい(笑)。でも、たまたま知り合いの不動産屋に紹介してもらって話が進みました。内装も仲間が協力してくれて、弟が建設関係に勤めていたのでアドバイスをもらいながら形にしていきました。結局、人とのつな がりがすべて。選手時代に学んだ「縁の大切さ」が、今まさに活きています。
一番は問診ですね。体は嘘をつかないけど、人は嘘をつく。恥ずかしくて言えないことや小さな違和感を、どれだけ引き出せるかが勝負です。
その感覚は、競輪の展開を読む力に似ています。「先行させても大丈夫」「3番手で内を締めろ」そんな判断の積み重ねでレースを組み立ててきました。だから施術でも「この人は台所の高さが合っていないのでは?」と直感できる。競輪を通じて培った洞察力が、そのまま今の仕事に活きていると感じます。
カイロはもちろんですが、地域を盛り上げたいんです。近隣のお店や事務所の方と話しながら「一緒に何かやりましょう」と声をかけています。選手時代も人との輪で成り立っていたけれど、これからは地域全体で盛り上がっていきたい。
SNSやライブ配信も取り入れて、元選手としての強みを活かしながら発信を続けていきます。
競輪ほど「展開を読む力」が必要な競技はないと思います。先行、マーク屋、3番手…..その場その場で自分がどのポジションにいるのかを考え、どう動くかで結果が変わる。その経験は選手にしかできません。
無理に先頭に立たなくてもいい。3番手なら3番手で役割を果たせば、必ず伸びる場面が来る。そうやって展開を考える力を、セカンドキャリアでも活かしてほしいですね。
32年に及ぶ選手生活で培った「展開を読む力」を、今は治療や経営に活かす俵裕一郎さん。
「競輪に置き換えれば答えは必ず出る」という言葉は、現役選手にとっても、引退後に新しい道を歩む人にとっても、大きな支えになるのではないでしょうか。
「競輪という舞台で培った感覚は、人生やキャリアのどんな場面でも輝きを放ち続ける
Tキャリ事務局一同、俵さんの今後の活躍を心より願っています。
俵裕一郎さん プロフィール
1991年4月11日デビュー67期
★現役生活32年 通算成績242勝
2023年7月11日に惜しまれつつ引退
現在は福岡県にて「T+カイロプラクティックたわらのて」を開業