横山 明男さん
「経営に迷ったときは、競輪だったらどうするかを考えるんです。すると、答えが出る。 競輪って、やっぱり人生の縮図なんですよ」
そう静かに語ってくれたのは、元競輪選手・横山明男さん。59期として24年間現役を貫き、2011年に引退。現在は「武蔵野うどん 竹國」のフランチャイズオーナー、そして「やきとりだるまさん」のオーナーとして、飲食業の世界で奮闘しています。
元選手の雇用創出やフランチャイズの展開を視野に入れた挑戦の中で、軸となっているのは現役時代に培った競輪的思考。
「競輪でやってきたことが、今の自分のすべて」と語る横山さんに、そのリアルをお聞きしました。
――競輪選手としての24年間を、今振り返ってどう思われますか?
本当に感謝しかないです。自分がやりたくて始めた競輪で、生活させてもらって。でもね、印象に残ってるレースって、あんまりないんですよ。全部が大事だったから、逆にこれってのが出てこない。
――練習はどんなスタイルでしたか?
西武園競輪場でのバンク練習が中心でした。選手時代の後半は街道も走らず、仲間とバンクでもがいて、じゃんけんで先行やる順番決めたりして。楽しかったけど、今思えばもっとギスギスしてた方が良かったかもしれない(笑)
――目標設定に悩んだことも?
ありましたね。「記念を獲る」とか「G1優勝する」とか、大きな目標って、なかなか言い切れなかった。でも言わなきゃ、そこに届かないんですよ。
今の選手にも言うんです。「言えばいいじゃん」って。でも、みんな言えない。それが❝正直❞なんですけど、それじゃ殻を破れない。
――突然の引退だったと聞きました。
2011年の東日本大震災が決定打でした。あの時、静岡競輪を走ってて、地震で開催が途中中止になって。津波の映像を見た瞬間、「もう無理だ」と思ったんです。競輪って、体当たりして賞金を奪い合う世界。でも、その裏には家族がいる。怪我をさせた相手にも人生がある。そう思った瞬間、牙を抜かれちゃった。
――その後、焼鳥屋へ?
はい。親がやっていた焼鳥屋に手伝いに入って立ちっぱなしで接客してたら、もう走れなくなっちゃって(笑)。しっかり練習しても抜けない、レースの道中でいっぱいになってしまう。体は正直でした。
――引退後、会社員という道もあったと思います。
ないです(笑)。サラリーマンは向いてない。競輪選手って、一生懸命が染みついてるから、普通の職場じゃ浮くんですよ。だから、自分でやるしかないって思った。
――最初は焼鳥屋、その後、うどん屋を?
そう。焼鳥屋を3店舗まで増やして、10店舗構想もあった。でもコロナで2店舗閉めて夢は潰えました。だから昼業態を作ろうと考えて始めたのが、この「竹國」 うどん店です。ちなみに、焼鳥屋の方は現在も長男・次男・長女・そして妻が中心になって運営してくれています。
――お店づくり、大変でしたか?
補助金の申請で、差し戻し16回。でも「やると決めたらやるしかない」。迷ったときは競輪に例える。「競りならどう動く?」 「番手ならどう守る?」ってね。答えは全部競輪にあるんです。
――まさに競輪は人生の縮図。
一番は問診ですね。体は嘘をつかない。本当にそう思います。経営の局面もレース展開も、一瞬の判断で決まる。だから迷ったら、競輪の時どうしてたかを考えると、自然と答えが出る。
――現在のお店には、元選手も?
自分含めて3人います。一時は5人いたけど、病気や家庭の事情で辞めた人も。でも、選手時代の当たり前が通用しないのが社会。一生懸命やりすぎて、浮いちゃうんです。それでも、ここなら頑張っていい。だから受け皿にしたかった。
――焼鳥屋ではなく、うどん屋にした理由は?
うどんって、米に次ぐソウルフードで絶対廃れないと思った。あと、竹國の味は本当にうまい。これなら勝負できると思った。
——現役選手や引退を考えている方へ、何か伝えたいことは?
「決めること」です。できるかできないかじゃない、やるかやらないか。決めれば動けるし、動けば世界が変わる。一歩踏み出した先に、また新しい人と出会える。その繰り返しで人生が広がっていくんです。
——引退後も“燃え続ける”には?
未練があるなら、とことんやりきってから辞めればいい。でも、辞めたら次に進めばいい。競輪で磨いた覚悟と根性があれば、何でもできる。選手は、みんな職人なんですから。
横山さんの話を聞いて、改めて「決める勇気」の大切さを感じました。競輪選手として24年間、一生懸命に走り続けてきた選手が、今は飲食店を経営する側となり、また新しい挑戦をしている姿に、とても励まされました。
自分がやると決めたことに全力で取り組むことの大切さを何度も語ってくれました。迷ったときには、競輪のときの経験を思い出し、瞬時の判断を大切にしてきたことも印象的でした。震災をきっかけに競輪から引退を決めた時の話も、簡単には決断できることではないけれど、決めたら前に進むしかないという気持ちの強さを感じました。
そして、何よりも、競輪選手だった頃の経験を今の仕事に活かし、仲間や家族と協力して進む横山さんの姿に、「挑戦し続けることの意味」を教えられた気がします。横山さんの言葉や考え方は、人生の迷いや不安を抱える人にとっても、きっと勇気を与えてくれると思います。
Tキャリ事務局一同、横山さんの今後のさらなるご活躍と、「武蔵野うどん 竹國」そして「やきとり だるまさん」の益々のご発展を心より願っております!
横山明男さん プロフィール
1987年05月09日デビュー59期
★現役生活24年 通算成績202勝
2011年06月16日に惜しまれつつ引退
現在は東京都にある「武蔵野うどん 竹國」のフランチャイズオーナーと「やきとり だるまさん」を経営