インタビュー#FILE02(元競輪選手の上田 三千夫さん) | Tキャリあなたのセカンドキャリアを応援します!

輝くセカンドキャリア、第二の人生を謳歌する元選手のお話を伺いました!

皆さんは、競輪選手界隈で大変人気の就職先として知られているホームセンタ―をご存じでしょうか。
それは・・誰もが一度はお世話になったことがあるでしょう、そう「カインズ」さんです!
今回は、そのなかでも特に自転車の販売が多い「カインズ浦和美園店」へお邪魔しました。

お話を伺ったのは、元競輪選手の上田 三千夫(ウエダ ミチオ)さん。

通算成績は287勝、選手生活28年を経て、2013年に惜しまれつつ引退。
現在は、カインズの自転車売場(サイクルパーク)で、専任社員としてご活躍されています。



◆企業情報◆

株式会社カインズ


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―――まずは、選手時代の思い出について


すべてが面白かったという思い出しかないですね。 中学時代、野球推薦ももらっていましたが、高校で自転車に転向しました。 同期は皆プロを目指していましたが、自分は考えておらず大学へ進学。 とある事情で中退することになってしまったのですが、 その時所属していた某企業チームのトップの方が「お前は短距離なんだから選手受けてみろよ」って言ってくれて。
それで受ける気になった。 だから給料がこんなにもらえるとは知らなくて、最初びっくりしちゃったくらいです。

自分の好きな練習をやって、負けるのも自分の責任だし。 勝てば勝ったで自分が全部(賞金)もらえるわけなので・・・すごいなと思いました。
若い頃は、もう「楽しい」しかなかったですね。

自分は、一番競輪が盛り上がっていく時代を見てきました。 何万人という観客の中で走ったんですけど、1周ずっと聞こえる声が「ヤジ」なんですよ・・すごい楽しいですよ(笑
自分、ヤジ大好きで、言ってもらえるってなんかわくわくしちゃって。 嫌いでも何でもいいから、自分のこと見てくれているんだって思えるのが、すごいプラスだったんですよね。逆に。

勝てば勝ったで、また声掛けてくれるんで。 すごい楽しかったですし、お客さまも選手も熱かった時代でしたね。

―――引退当時のセカンドキャリア事情について


当時は、(競走場の)警備員か、自分で起業するかっていうくらいしか、考えつかなかったと思うんですよね。 正直、引退する年になっても具体的にはまだ何も考えていなかった。 とはいえ、いろいろと(資格)受けたりはしていたんですよ、実は。

競輪学校の先生になるのかなぁとか、考えたりもしていたんですけど、あいまいでしかなかった。 まぁ、選手になったのもあいまいだったんですけどね。(笑
なのでそこらへんは、どうにかなるだろうくらいにしか考えてなかったんですけど・・ 今の時代だったら、それはちょっと「甘い」考えなのかもしれませんね。

現役で頑張っている選手の中には、セカンドキャリアの話をするとネガティブに捉える方もいると思うんですね。 競技に集中したいという気持ちもわかります。でも、自分が考えている以上に(社会は)厳しいと思うので、 少しだけでも意識しておかないと、絶対後悔すると思います。
まずは、興味を持つこと。まわりにいろいろ聞くべきだし、気にするべきですね。はい。
とはいえ、どう捉えるかは自身の問題なんでしょうけど・・

―――引退後の生活設計について意識しだしたのはいつ頃?


自分たちの時代に選手年金制度が廃止になるって話がありまして。
それだったら今引退したほうがいいんじゃないのかって・・それでいろいろ動いたのは確かですね。 震災での不安もありましたので。

―――どんな(就職)活動をいつから始めましたか?


引退後の生活設計ですけど、当時は真面目に考えていなくて・・
ちょうど引退する年に競輪学校(現:日本競輪選手養成所)の教官採用試験があって、受かったら引退しようくらいに思っていたんですね。 結局、そんな甘いもんじゃなかったんですけど。

思うようなレースが出来なくなって、練習にも身が入らなくなって・・ そんな時に、競輪場の前(道場の入り口)にカインズの募集が貼ってあったんですよ。 それが、自転車安全整備士の資格保有者の募集で。
2年くらい前にその資格を取っていましたし、かなりいい条件になるので、 じゃあ、話だけでも聞いてみようかなぁって電話して・・それでとんとん拍子です。

―――タイミングよくカインズの募集をみられて?


当時の募集は、たまたまだったみたいで。 自転車屋さんの開業を勧めてくれる方々もいたんですけど、いろいろ考えて、ここが一番自分に合ってるかなって。

―――起業されてる元選手の方もたくさんいらっしゃいますよね。


ひとりで商売やってる方、尊敬しますよね。ものすごいと思います。
現役選手や元選手同士SNSでつながっているんですけど、 自然災害(大雨など)で困っていた方がいた時なんかは、皆で助け合ってたりもしています。 ネットのつながりってすごいなーって思いますね。

そういうことも乗り越えて、利益を出していかなきゃならないじゃないですか。 大きな楽しさがある反面、大変ですよね・・うん。

―――普段からお客様に対して心掛けていることは?


すべてのお客さまに対して、平等に接すること。 あとはお客さまのニーズを汲み取って、最適なご提案ができるように心掛けています。

―――お仕事でのご苦労、やりがいなど。


やりがいは、お客さまが指名で来てくれるようになるんですよ、上田さんいます?って。
中には、ご指名で通ってくれてこれまでに5台くらい買ってくれた方もいます。

長年通ってくださるご家族なんですが、 当初高校生だったお子さんが成長して、ある時、子どもが生まれましたーって連れてきてくれたんですよ。 もう自分の孫みたいに思えて、よかったねーって。そしたらこの前、2人目連れてきてくれたんですけど(笑

高校生の時に1台目の自転車をご購入頂いて、つぎは子供を乗せる電動自転車を購入して頂いて・・ それって、信頼して頂けてるってことじゃないですか。ありがたいですよね。

(商品の)魅力をお伝えして、ご購入頂いて、次またいい情報をお伝えして・・ そうやって信頼得て、また買ってもらえる・・世代を超えて繋がっていく感じでしょうか。

メリットだけでなくデメリットもしっかりお伝えすると、皆さんビックリするんですよ。で、結構喜んで頂ける。 そういったリアクションのお客さまは、結構な確率で、また来てくれます。

また、元選手なんですよってお伝えするだけでも会話(コミュニケーション)が広がりますよね。 なかには、現役時代のことをすごく覚えててくれてる方もいて・・うれしいですよ。

あと、職場って「仲間」ですよね。 全然知らない人同士じゃないですか、もともとは。 自分は選手だったからって傲りは捨て、自分から相手の懐へ飛び込んでいく。 資格は、あくまでも資格(試験の結果)であり、実践は全然違いますので。

電動自転車とか、一般的なシティサイクルとか、やっぱり経験がないと(扱いが)難しいんです。 そういう経験を持っている現場の先輩たちに全部教えてもらわないとだめなので、 いかに仲間の懐に入っていくかが、大事じゃないかと思います。

自転車だけじゃなくて、パソコンの扱いなんかも教えて頂いたり・・ 自分は、そういうところ(仲間・先輩)で、すごい恵まれたと思っています。

(後輩選手に向けて)自分の置かれた立場を考えて回るようにすると言うんでしょうか、 競輪でいう4番手回りから始まる・・じゃないですけど、そこからですよね。
引退して転職した(新しい環境に行った)際には、そういった感じで考えた方がいい。 持ちつ持たれつ、そう思います。

―――選手時代やそれまでのご経験で役に立ったことは?


選手は個人事業主ながらラインで戦っているんで、どんなラインでも大切にしなければいけないし、時には裏切られることもある。 その経験から、今も深く考えすぎず、その時その時に応じて動けるようになっているんじゃないかと。

どの仕事でもいいこともあれば悪いこともある・・そう思うようにしてますね。
どんな仕事でもそうだと思うんですよ、個人事業主、ラーメン屋、なんだかんだ言っても結局まわりで手助けしてくれる人はいると思う。 持ちつ持たれつですね、はい。

―――今のお仕事、どんな人に向いていると思いますか?


やっぱり真面目じゃなきゃだめですね。はい。 真面目ってのは、同じことをコツコツできる人。選手で言うと練習好き。

あと、やっぱりコミュニケーション、しゃべらないとだめですよね。 不愛想は損しますから、絶対に。

―――後悔のないセカンドキャリアをおくれるよう、後輩選手の方々にアドバイスを


いろんなことに興味を持った方がいいですよね、絶対。 出来そうなことがあるんだったら、何にでも挑戦してみるといい。 それがだめなら次!って感じで、引き出しは多いほうがよいと思うので。

昔、東大自転車部OBの方に一番好きなことを仕事にしないほうがいいって言われたことがあって・・ その時は、「自転車に乗るのは好きですけど、整備はそんなに好きじゃないから大丈夫です。」って返したんです。(笑
実際、今の仕事10年続いていますし・・当たってたのかもしれませんね。(笑

ただ、つらいときはそんなに固執する必要もないと思うんです。 石の上に3年とか言いますけど、石の上にそんなに我慢することないよって・・
限界を感じたらすぐ切り替えた方がいい場合もある、今(の時代)結構いろんな選択肢あるじゃないですかって。

あと、資格はたくさん持ってた方が絶対いいですよ。それはもう取れるだけ取っておいた方がいいです(笑
英語が話せるとか、そんな感じでもよいので。

社会の厳しさって、引退してから理解すると思うんですけど、でもそれじゃあちょっと遅いかもしれない。 だから、その前から少しづつ、手探りでいいから備えてほしいですね。

―――これから選手を目指す若者たちへひとこと


そうですね、競輪選手はいい商売だと思いますよ。 競輪選手だけじゃなく他競技含めスポーツ全般に言えることですが、すごい魅力ある職業ですよね。 自分の責任(努力)で稼ぎが決まる・・これは気持ちがいいことだと思います。 今思えば、もっと練習しておけばよかったなぁと思うんですけど。(笑

自分は何も考えずに、ただ流れで選手になっちゃったみたいなところがあるんですけど・・ それでも、30年近く続けられたんですから。だから、好きで、楽しくなってくれば、続けられる職業だと思うんです。 なので、まずは好きにならなきゃだめ。好きになるというか、興味を持つというか、で、そこからですね。

そうすると生活がすごく楽しくなる。起きる時間も自分で決められる・・そうです、夜更かししてもいいんですから。(笑
それでもトレーニングして、結果が出せれば、正義。そんな職業って他にあまりないですから。

取材を終えて―――


「仲間」をキーワードに人との繋がり、絆をとても大切にされている上田さん。
ご本人の醸し出すあふれるやさしさと他人への敬意、そこから得る信頼が紡ぐ絆・・・
そのお人柄に惹かれ、今も多くの現役選手、選手OBの方々が上田さんに相談を持ちかけ、時には直接会いに店舗へ訪れるとのこと。

セカンドキャリアを考えるアスリートの皆さんにとっても、何かしらのきっかけや気づきを感じて頂けたなら幸いです。